休日は外へ出よう、という趣旨の日記です。先週の土曜日がとても良い休日だったので、それについて記録しておきます。

ありがとうユング

先週の土曜日のこと。私は昼頃に起き、ぼーっとYoutubeの動画を眺めていた。夕方頃になって、以下の動画がおすすめに表示された。

「気晴らしは麻酔のようなもの。自分の内側と向き合う必要がある」といった趣旨の、示唆に富む動画だった。ジョーゼフ・キャンベルの「英雄の旅」との関連で興味深いと感じると同時に、自己啓発としても優れた内容だと感じた。

この動画に感化された私は、外へ出ることにした。とりあえず打ち立てた目的は、参議院選挙の投票済証を提示するとサービスが受けられる油そば屋へ行くこと。しかし、その過程で様々な素晴らしい出来事に巡り会うことになった。

スーパーの閉店に立ち会う

目的地まではおよそ3km。その日は風が心地よく、比較的涼しかったこともあり、思いつきで走って向かうことにした。前日に友人から「ジョギングを始めた」という話を聞いていたのも、無意識に影響していたのかもしれない。

息を切らしながら街を進んでいると、普段は見過ごしてしまうような景色が目に飛び込んでくる。そんな中、見慣れたスーパーマーケットの店先に、「閉店セール」の表示を見つけてしまった。しかもその日が営業最終日。

そのスーパーは、私が学生時代にずっと世話になっていた店だった。

一度は通り過ぎたものの、やはり気になって引き返し、店長に挨拶をした。おそらく相手は私のことなど覚えていないだろうが、私にはその店での思い出が山ほどある。

貧乏生活を送っていたこともあり、滅多に外食はせず、ひたすら簡単な料理を自炊していた。学生時代の私の体は7割がそのスーパーの食材で構成されていたと言っても過言ではない(残りの3割は近所のパン屋の売れ残りセール品とパン耳)。

とにかく、私の学生時代を語るうえで無くてはならない店だったのだ。その感謝を直接伝えることができたのは、個人的にとても嬉しい出来事だった。

油そばからジャズへ

スーパーから油そば屋までは、あと2km。普段全く運動をしないため、走るのはすぐに諦めた。結局ちゃんと走ったのは1kmほどだったが、3日後の今でも筋肉痛が残っている。それほどの運動不足なのだ。

投票済証の提示で麺量が倍になった油そばを食べ、さてどうしたものかと街をぶらついていると、どうやらその日は街中の至る所で無料のジャズコンサートが開かれている日だということを知った。 ジャズには詳しくないが、ちょうど友人がサクソフォンを始めようとしている話を聞いたばかりで、興味を持っていたところだった。

そこで、近くの会場へ足を運んでみることにした。

観られたのは残り2グループの公演だけだったが、どちらも素晴らしい演奏だった。1グループ目では期待通りサクソフォンのソロを聴くことができた。2グループ目はサクソフォンこそ不在だったものの、トリを飾るにふさわしい圧巻のパフォーマンスだった。

シンクロニシティ

とりわけ印象的だったのは、2グループ目が最後に演奏した曲がBobby Troupの「Route 66」だったことだ。

この曲は、以前グランドキャニオンツアーに参加した際に車内で流れていた、非常に思い出深い曲なのです。

友人がサクソフォンを始めようとしている件、そして私自身のグランドキャニオンツアーの件。これら全く無関係に見えた出来事が、この一曲を通して結びついた。

これには流石に、シンクロニシティを感じずにはいられなかった。そして一連の出来事のきっかけが、ユングに関する動画だったというのもまた、出来すぎた偶然の一致だ。

念のために言っておくが、ここで言うシンクロニシティとは、ユングが提唱した「意味のある偶然の一致」という心理学的な概念であり、スピリチュアル方面に歪められた解釈ではない。この一連の出来事を「意味がある」と感じたのは、そこに個人的な文脈が幾重にも重なっていたからに他ならない。

もし、あの土曜の夕方、私が「面倒だから家でゆっくりしていよう」と決めていたら、どうなっていただろうか。

お世話になったスーパーは、私の知らないうちにひっそりと閉店していただろう。店長に感謝を伝える機会は永遠に失われていたはずだ。 街で無料のジャズコンサートが開かれていることなど知る由もなく、人生初のジャズの生演奏体験はもうしばらく先のことになっただろう。 そして何より、この奇妙で美しい巡り合わせを体験することも、なかったのだ。

私の怠惰な心が生み出すはずだった「何もない休日」と、私が実際に体験した「特別な休日」。その運命の分岐点は、たったひとつの「外に出てみよう」という小さな決断だったのである。

機会ガチャを回しに行こう

ここでようやく、この日記のタイトルに繋がる。 私は、外に出るという行為は「機会ガチャ」を回す行為そのものだと考えている。

家の中にじっとしていては、ガチャを回す権利すら得られない。何も起こらない「ハズレ」が保証された日々が続くだけだ。しかし、一歩外に出れば、そこには無数の可能性が転がっている。SSRな出来事は多くないかもしれないが、SRやRくらいの当たりは、意外と引けるものだ。たとえN(何もなし)だったとしても、「外の空気を吸って体を動かした」という最低保証の経験値は手に入る。

逆に、外出のみが機会ガチャを回すための方法というわけでもない。どこかへ出かけて帰ってくる時に、行きとは違う道を選ぶのも良い。行きつけの店でいつもと違うメニューを頼むのも良い。

これらは能動的で個人的な方法だが、もっと良いのは良い友人を持つことかもしれない。自分の関心の埒外にある選択肢を、友人が持ってきてくれることがある。単にハマっているものや関心事を聞くだけでも、新しい世界が開けることがある。

結局、人間は冒険好きなのだと思う。我々の祖先は、冒険をした結果生き残った人たちだ。ほとんどの人間の中には、退屈よりも冒険を高く評価する関数が組み込まれているはずだ。

原理はともかく、今回の私は間違いなくSSRを引いたと感じている。学生時代の思い出に美しい区切りをつけ、新しい音楽の扉を開き、過去の体験と現在の関心事が雷に打たれたように結びつくという、最高の体験だった。

英雄の旅は、日常からの一歩から

ジョーゼフ・キャンベルによれば、神話の英雄は日常の世界から非日常の世界へ旅立ち、試練を乗り越え、宝物を得て帰還する。

大げさかもしれないが、この日の私の行動も、ごく個人的でささやかな「英雄の旅」だったと言えるかもしれない。 安楽な日常から一歩踏み出し、街という非日常へ向かう。そこで様々な出会いや気づきという「宝物」を得て、豊かな心持ちで自宅へ帰還する。

だから、もし休日に何をするか迷っているなら、とりあえず外に出てみることだ。目的はなくても構わない。ただ歩くだけでも、世界はあなたに何かを語りかけてくるかもしれない。YoutubeやNetflixは投げ捨て、草に触れよう。これは将来の自分自身への戒めでもある。これでも足りなければ、風神バルバトスの言葉を思い出すべきだ。

……ということで、良い休日を過ごせたというポエムでした。

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