最近、アコースティックギターを練習しています。最近と言っても1年くらい続いており、普段熱しやすく冷めやすい自分としては異常なレベルでハマっています。
1年という良い節目を迎えたこともあり、ここまでの軌跡とこれからの目標についてまとめておこうと思い、この記事を執筆することにしました。
きっかけ
私がアコギを買ったのは10年前のことでした。もはや何故始めたのかは思い出せませんが、自分へのプレゼントとして島村楽器で1万円のアコギを買ったことは覚えています。
しかし、Fコードは押さえられないし指の痛みはしんどいしで、結局1ヶ月も経たずに挫折してしまい、ギターはクローゼットの中へ格納され、その後引っ越しの際に友人に引き渡したのでした。
ところが去年の夏頃、再び突然ギターに挑戦してみたくなったのです。きっかけはいくつかあるものの、最大の理由は原神のメインテーマとの出会いでした。
なんと美しい曲なんだろうか。「◯◯のテーマだから」とかの背景情報に関係なく引き込まれた曲というのは本当に久しぶりで、どうにかしてこの曲と音楽的に触れ合いたいと思ったのです。
音楽的に触れ合うと言ってもDTMでもピアノでも良いわけですが、では何故アコギに至ったのかといえば、原神のウェンティさんに惹かれてしまったからでした。
(実はまだ持ってないんですけどね。)
彼が弾くのは竪琴ですが、弦を指で弾く楽器の音色はやはり良い。そして同じようなことがアコースティックギターならできるじゃないか、という気づきに至ったのです。
そんなわけで友人からアコギを買い戻し、練習を始めました。
TAB譜を見つけよう
幸い、 原神のメインテーマは有名な曲なだけあり、良質なTAB譜が容易に見つかりました。
このアレンジが、ある程度原曲に忠実でありながら難易度も低くてちょうど良かったです。大きなポジション移動も、初心者を挫折させてくるセーハ(バレーコード)を要求してくる箇所もそんなにありません。
ちなみに、原神のメインテーマでTAB譜を公開している動画だとこちらも魅力的でした。
聞く分にはこちらの方がお気に入りなのですが、流石に難易度が高そうなので断念。
TAB譜を手書きしよう
単にTAB譜をダウンロードしたり、TAB譜を写経することも考えましたが、やはり楽器の練習をするなら手書き可能な楽譜を用意したい。というわけで、紙にTAB譜を写経しました。
A4・5mmの方眼レポート用紙を横に使ってみたところ、これが結構ちょうど良かったです。
こんな感じで。楽譜も一応読めるものの、どちらかと言えばMIDIの方が直感的に脳内再生しやすいので、方眼1マスを8分音符として横軸がタイミングを反映するように記述しました。音の長さの情報はこの記法だと失われてしまいますが、そこはノリで。
ちなみに、改めて紙にTAB譜を書き起こすのは地味に重要な作業でした。どこが繰り返しなのかを改めて把握することができるし、繰り返されているところは極力繰り返し記号を使って圧縮することで、後にメモをしたときにも情報が散逸せずに済みました。
楽器を調整しよう
ということでようやく演奏…と思いきや、やっぱり難しい。やはり10年前と同じ壁が。めちゃくちゃ力を入れて押弦しないと音がビビってしまい、無理やり押さえれば指に激痛が走ります。「またダメなのか…」と心が折れかけました。
そこで調べたところ、ギター購入時や長期間メンテナンスしていなかった場合、「弦高調整」が非常に重要だという情報を発見。弦高とは、弦とフレットの間の隙間のことです。
測ってみたら、12フレットでの弦高が4mmを超えていました。一般的にエレキに比べアコギは弦高を高く設定するのがよいらしいですが、それにしてもこれは高すぎます。
というわけでトラスロッドのネジを回しまくって、開放弦を強めに弾いてもギリギリフレットに触れない高さにセットしました。12フレットでの弦高は6弦で2.3mm、1弦で1.8mm。
加えて、弦も10年ぶりに張り替えました。これについても、細いゲージ(太さ)のものほど少ない力で押さえられると知り、評判の良かったElixirのExtra Lightゲージを選びました。
↑アフィリエイトじゃないのでご安心ください。
これらの調整を行ったところ、衝撃的なレベルで演奏しやすくなりました! 特に1、2フレットあたりなら、ほとんど力を入れず、弦に軽く触れるだけでクリアな音が鳴ってくれるのです。
厳密に言えば弦高を低くしすぎたり弦を細くしたりすると音色が変わってしまうようですが、初心者である以上、音色なんかよりとにかく弾きやすくすることが重要だと判断しました。
自分は「どうせ10年前に買ったギターだし壊れたら買い直そう」くらいの気持ちだったから良いものの、トラスロッドの調整は専門的な技術を要する作業ではあるので、自分でやるのはあまりオススメしません。破壊するリスクを受け止めるならば、調整の仕方はググればたくさん出てくるのでそれを参照してください。
楽器店によっては、購入後のメンテナンスとして無料でやってくれるところも多いらしいので、利用できるならそれを積極的に利用するのが良いでしょう。
爪を整えよう
楽器と同じくらい、爪を整えるのも大事でした。といってもやることはシンプルで、左手(弦を押さえる方)はできるだけ爪を短くし、右手(弦を弾く方)は白い部分を1.5mm程度に維持すればOKとのこと。日常生活に支障をきたすほど伸ばす必要はありません。
たったこれだけですが、特に左手の爪は、こまめにチェックする価値ありです。なんか前に比べて弾きにくいな?と思ったら、だいたい左手の爪が伸びてきたのが原因でした。
指の痛みが無くなるまでひたすら練習しよう
あとはひたすら練習するだけです。
振り返ってみると、半年もの間飽きずに練習を続けられたのは選曲が良かったからだと思います。曲が良いというのはもちろんのこと、難易度も丁度よいし、何よりログボをもらうために毎日ログインすると必然的にこの曲を聞くことになり、「そういえば練習しないとな」という気にさせてくれたのでした。
均せば1日20分くらいしかギターには触ってなかったと思いますが、それでも2週間位すると身体がギターを演奏するために変化していきました。つまり、左手の握力が強くなり、指が前に比べて開きやすくなり、何よりも重要なこととして、弦を押さえても指の痛みを感じにくくなっていきました。
指の痛みが完全に消滅するまでは1ヶ月くらいかかりました。最初は(弦高や弦を調整しても)10分くらい弾いていると苦痛だったのですが、今ではもう30分くらい練習しても痛みは感じません。
指の痛みは、ギターを辞める最大の原因なのではないかなと思います。「痛みが無くなるまで耐え続けろ」という脳筋な解決策は一理あるものの、楽しむためにやっている音楽で苦痛を感じるのはできれば避けたいところ。
指の痛みを削減するため、最初期に役立ったコツとしては以下のとおりです。
押さえるのは鳴らすときだけにしよう
最初のうちはどうしても、どの弦がどの音を鳴らしているのかよくわからず、とりあえず指を置いている全ての弦をガッチリ押さえてしまうと思います。が、そうしているとすぐに指の耐久値が削れていってしまいます。
大切なのは、実際に音を出す弦以外は余計な力を入れず、音を出す瞬間に、必要な弦だけを適切な力で押さえること。音を出すまでは弦に軽く触れておく程度にし、ピッキング(弦を弾くこと)に合わせてキュッと押さえるイメージです。
こうすると、指の耐久値を温存し、より長く練習が続けられるようになります。
液体絆創膏や瞬間接着剤で補強しよう
これはやや反則技な気もしますが、練習したいのに痛くて無理という場合は、液体絆創膏や瞬間接着剤を指先に塗布するのも効果的でした。
ただし、これを常用してしまうと、指の皮が自然に硬化していくプロセスを妨げてしまう可能性があります。あくまでも「どうしても練習したいのに痛くて集中できない!」という時の緊急回避的な手段として捉え、頼りすぎない方が賢明でしょう。個人的には、数回使った程度で、あとは自然に指が慣れるのを待ちました。
ギターの上達曲線を理解しよう
どこで見た情報だか忘れましたが、ギターの上達曲線は初心者に厳しいカーブになっているそうです。
一般的な趣味の上達曲線がこんな感じだとすれば…
ギターの上達曲線はこんな感じで、練習を始めてからしばらく、成果が全く発生しない苦しい期間が結構あるそうです。
これは、私自身の経験からも痛いほど実感できます。例えばピアノなら、鍵盤を叩けばとりあえず音は鳴ります。しかしギターの場合、適切な場所を、十分な力で、しかも他の弦に触れないように押さえないと、そもそも綺麗な和音が鳴りません。 最初のうちは、ただ「音を出す」という行為そのものが非常に難しいのです。
成果が発生しない上に、指の痛みという身体的な苦痛が伴うとなれば、そりゃ挫折したくもなります。
10年前、私がギターをすぐに辞めてしまったのは、明確に「この曲が弾きたい!」という強い目標を持てず、情熱が不十分なままネットの教則情報に従い、そこまで好きでもない基礎練習に取り組んでいたからでした。その結果、この「苦痛の谷」を越えることができず、挫折という結末を迎えてしまったのです。
だからこそ、「苦痛の谷」を乗り越えるまで諦めずに練習を続けること。そして、それを可能にするために、「本当に大好きな曲」かつ「今の自分にとって現実的な難易度の譜面」から始めることが本当に重要です。
新たな譜面を開拓していこう
原神のメインテーマをある程度暗譜で弾けるようになったところで、次の曲に挑戦し始めました。
アカツキワイナリーのテーマ
2曲目に選んだのはやはり原神のアカツキワイナリーのテーマでした。
やはり原神から。この曲もそこまで複雑な運指はありませんが、大きな特徴として、親指で6弦(一番太い弦)を押さえるテクニックを多用します。
これは、初心者の勇気をへし折ってくるバレーコードを部分的に簡略化する際にも役立つ重要なテクニックです。この曲を通して自然と鍛えられたのは大きな収穫でした。
潺々たる寒流 - Les murmures des flots
今年1月ごろ、ついに原神のフォンテーヌ編を突破し、その中でめちゃくちゃ良い曲に遭遇しました。
フォンテーヌの曲は全体的にクラシック音楽感が強く、中でもこの曲は、「知る人ぞ知るクラシックギターの名曲ですよ」と言われたら信じてしまいそうなほど美しい調べを持っています。
ということで譜面を探しました。
この動画は大変素晴らしく、TAB譜つきなだけでなく、後半で運指もゆっくり紹介してくれています。
現在はこの曲を練習しています。
今後の展望
現在の私の最終目標は、アグスティン・バリオス作曲の『大聖堂:I. 前奏曲 サウダージ (La Catedral: I. Preludio Saudade)』をマスターすることです。
何故かと言えば、この曲こそが、私がそもそもアコースティックギターという楽器の音色に強く惹かれる原体験となった曲だからです。
難易度的にはだいぶ跳ね上がってしまうので、原神の曲で鍛えてからいずれ挑戦したいな……くらいの感じですが、これが弾けたら20年越しにちょっとした夢を実現できてしまいます。激アツですね。
以前、「エースコンバット04が教えてくれた人生の大切なこと」として、「何をしていたとしても、自分は成長し続けている」という気づきについて書きました。
今回のギターへの再挑戦が概ね成功しているのも、まさにその例の一つかもしれません。このゲームは本当にいろんなことを教えてくれますね。
さいごに
ギターは素晴らしい楽器だなと感じました。メロディもコードも(変なことをすればパーカッションも)1台でこなせる楽器というのは他には無いように思います。
そして、繰り返し演奏することで筋肉記憶(?)が定着し、美しい曲が自分のものになっていく感覚には、妙な中毒性があります。
「幸福とは力が増大していく感覚である」とか「幸福は成功の結果得られるものではなく、成功を追い求める過程に存在するものだ」みたいな言葉があった気がしますが、本当にその通りだなと感じました。
なんとなく日常に退屈している方は、是非楽器を始めてみてはいかがでしょうか。
独り言
なんだかんだで、アコースティックギターは自分の意志で熱心に練習した初めての楽器となりました。楽器自体は他にもやっていたのですが、自分の意志ではなくお稽古としてやらされていた感が強く、結局「演奏を楽しむ」という概念がわからないままでした。
振り返ってみると、あのお稽古というのは一体何だったんでしょうか。別に好きでもない聞いたこともない課題曲が与えられて、それが完璧に演奏できるようになれば花丸をもらって次の課題曲へ進む。その上、正直言って音楽的な魅力や面白みを全く感じられない基礎練習やら教則本までやらされる……。
スキルを上達させるのには最も効率的な方法なのでしょうが、あの経験を通して音楽を楽しむことができていたかと言えば、あまりそうは思いません。むしろ音楽が嫌いにすらなった気がします。
- 上手く演奏できない理由を楽器に転嫁する
- 一つの曲に固執せず、自分が好きな曲にどんどん手を付けていく
- 練習曲はやらない
などなど、お稽古的なやり方を全て無視したおかげで、ようやく音楽の文字通り、自ら音を出すことを楽しむことができるようになりました。
もちろん、プロの演奏家を目指すのであれば幼少期からそういう方法で練習するのは正しい手段の一つなのでしょうし、現在音楽が好きで、関連するスキルや知識が若干あるのはそのおかげでもあるので、一概に悪とは言えないものの、なんだかなあという気持ちです。
結局のところ、音楽(に限らず任意の活動)について本当に重要なのは、それを自ら楽しむことができるか、ということなのでしょう。楽しければ自然と継続するし、結果上手くなる。
「努力は夢中に勝てない」みたいな言葉がありますが、どうやら「之を知る者は之を好む者に如かず。之を好む者は之を楽しむ者に如かず」という孔子の言葉が元ネタみたいです。
この記事を読んでいる方はきっと、これからギターを始めようとしているか、今始めたばかりの方だと思います。
一緒に楽しんでいけたら良いですね!この記事が、その助けになれば幸いです。
おまけ
偉そうなこと言いましたが、まだこんなレベルです。録音すると粗が目立ちますね……
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