Undertale の中で最も好きな曲の一つ、『Battle Against a True Hero』。 これについて考察します。

この記事にはUndertaleに関する重度のネタバレを含みます。 まだプレイしていない方は、速やかにこのページを去り、プレイ動画や攻略に関する一切の情報を遮断した上でUndertaleをプレイしてください。

Undertale 内の考察

Undertale はめちゃくちゃライトモチーフを使ってくるが、この曲はそれの最たるものである。 Bring It In, Guys! や Hopes and Dreams に次いでザ・ライトモチーフな曲になっている。

文脈

『Battle Against a True Hero』は G ルート中盤のボス、Undyne the Undying(ふじみのアンダイン)戦の BGM である。

Ruins, Snowdin, Waterfall すべてで規定の数のモンスターを殺害することでこの戦闘は発生する。

Undyne のモチーフ

Undyne のモチーフは最初の遭遇時、Undyne(Tr.30)で明かされる。

(以下、譜例はすべて CM あるいは Am で記載する。Undertale では A=440Hz とは限らないため、調号にこだわる意味がなさそうだから。)

このモチーフはその後 Undyne が関わってくる多くの曲に取り入れられている。

例えば Spear of Justice では以下のようにノリノリになって入ってくる。

Undyne とのもう一つの戦闘曲である Battle Against a True Hero でも、これがかなり変形されて使われている。

かなり気づきにくいが(というか同じモチーフと言っていいのか怪しいが)2,3,1 個ごとの下降の組み合わせという点で共通していることがわかる。

このモチーフは曲の前半部分ずっと繰り返される。

Ruins のモチーフ

次のセクションでは、一見すると Ruins で聞いたメロディーが飛び込んでくる。

このモチーフは続く Waterfall でも使われているものでもある。

Undyne 戦までの物語前半の全体を表すモチーフだと考えても良さそうだ。

諦め(後悔)のモチーフ

しかし、もう一段深掘りすることができる。 An Ending(N ルートのエンディングで聞ける曲)にも、同じようなメロディが存在する。

そして、こちらの方が Battle Against a True Hero のメロディに近いのだ。

しかし、何故ここで An Ending が出てくるのか?確かにエンディングには Undyne も関係しているだろうが、それは他のすべての主要キャラクターにも言えることだ。もっと深い関係はあるのだろうか?

実はある。 An Ending のこのセクションはエンディングだけでなく、もう一箇所でも再生される。 なんと N ルートで Undyne 戦に挑んだ時、Undyne を殺害しようとするとこのセクションが再生されるらしい。

さらに言えば、このテーマは Don’t Give Up(P ルート最終盤)でも聞くことができる。

この記事ではこれを「後悔のテーマ」と呼んでいるが、私は「諦め」のモチーフと呼びたい。

ハッピーエンドを諦めたプレイヤーに Ruins へ戻るよう促し(An Ending)、再び最大の危機に陥ったプレイヤーを勇気づけ(Don’t Give Up)、そしてゴールにたどり着いたときには「諦めずによく頑張った!」と休息(Respite)を与えてくれる。

プレイヤーと Undyne との関係によっては、諦めずに挑んでも敵わないことがあるという悲劇的な側面を表すし、最悪の状況では肉体が滅びるほどの「諦めない心」を表すこともある。

このモチーフは、Ruins から始まった物語前半を締めくくるためのものであるというだけではないのだ。

Waterfall のモチーフ

Battle Against a True Hero の後半では、以下のメロディが繰り返される。

これは Waterfall で聞いてきたメロディを拡張したものである。

Undertale をはみ出した考察

Battle Against a True Hero は東方 Project の音楽から強い影響を受けたとされている。

ZUN ペットっぽい音源(ていうか実際に ZUN ペット?)の使用がその最たるものだが、音楽理論を持ち出すとより深掘りできる。

コード進行

東方 Project を代表するコード進行といえば、F-G-Am (通称 ZUN 進行)である。

使用例は無数にあるが、例えば『さくらさくら ~ Japanize Dream』(妖々夢 ED)は超ざっくり言えばこんな感じだ。

これを発展させると以下のようなコード進行が得られる。(引き続き、キーは C あるいは Am であるものとする。3 和音より多くは扱わない。)

  • F-G-Asus4-A『天衣無縫』(緋想天最終ステージ会話)等
  • F-G-Em-Am 『緑眼のジェラシー』(地霊殿 2 ボス)等
    • またの名を王道進行と呼ぶ。J-pop で無限に使われてきたコード進行。

さて、Undertale に戻ろう。

Battle Against a True Hero はだいたい今登場したコード進行の組み合わせになっている。

前半は Am-F-G の繰り返しでしかない。 後半は少し複雑だが(やはり雑に言えば)以下のようになっている。

これをジャパニーズ音楽への、いや、ZUN へのラブレターと言わずして何と言えば良いのか。

Undyne the undying の攻撃も、どことなく東方 Project の影響を感じられる弾幕だ。地霊殿あたりでこんな弾幕避けた気がする。

おまけ

前半は Am-F-G、後半は F-G-Am な曲っていうと、Magic Spear I(Ace Combat 7)もめちゃくちゃ好きです。

  • Asus4-A-F-G
  • F-G-Asus4-A (or Am)

そういうシンプルなのが好きなのかもしれない。

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