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現在、諸事情から、結構高級なDJ機材にいつでも触れられる環境があります。一方で、その環境は今後半年もせずに消滅することになっています。
そうなってくるとなんだかもったいない。せっかくなので、今のうちにDJについて学んでおこうと思いました、という記事です。
背景
そもそも私は、これまでの人生で2回くらいしかクラブに行ったことがありません。普段はCubaseに向かってオーケストラ的な曲を作っており、ダンスミュージックとは無縁の世界に生きてきました。
だから、DJが一体何をする存在なのか、何が面白いのかも全く分かっていませんでした。私の解像度といえば、「よしなにエフェクトをかけたり、ターンテーブルをキュルキュルさせつつ曲を途切れさせないようにつなげる人」くらいのものでした。自分とは全く関係のない、パリピやストリートの住人たちの世界だと思っていたのです。
しかし、機材を前にするからには、根本的に「DJとは何者なのか」を知らねばなりません。そう思い立ち、Gemini先生を壁打ち相手に色々と調査・議論を重ねた結果、どうやらDJは決して私から遠い存在ではないことがわかってきました。
DJとはガンギマリパーティーのBGMをキュレーションすることである(?)
Gemini先生に「クラブミュージックが分からない自分が何を流せばいいのか」と相談していたところ、「好きな特定のジャンルがないのであれば、何らかのコンセプトを軸に好きな曲を繋げれば良い」という提案をされました。
ここで気づいたのですが、自分はすでに、全く同じアプローチを「動画のBGM選定」でやっていました。
例えば、過去に製作した「toki pona」の30分の解説動画では、以下のようなBGM選定を行いました。
第0章: ごあいさつ第1章: 文字と発音第2章: 文を作ろう第3章: 修飾第4章: 前置詞第5章: 助動詞第6章: 疑問と命令第7章: la第8章: 色、数、その他第9章: 卒業試験
§0 jan Japali - luka sama mi (no Vocal)§1 STRIKE WITCHES - ウィッチの斗い§2 Master of Epic - BREEZE OF MIRIM§3 The Elder Scrolls V: Skyrim - Far Horizons§4 Pilotwings - Hang Glider§4 Pilotwings 64 - Hang Glider§4 Pilotwings Resort - Hang Glider§4 Pilotwings 64 - Birdman§5 I.Q FINAL - The 2nd Tide§6 ACE COMBAT7: SKIES UNKNOWN - Magic Spear I§7 Genshin Impact - Rite of Battle§8 jan Japali - Sunrise Harbor§9 Genshin Impact - Lamentation et Triomphe§9 jan Japali - kanasimi基本的にすべてをゲーム音楽で統一し、前半は『Skyrim』などで広大な世界を演出しつつ、後半の卒業試験に向けて緊張感を高めていく構成を意識しました。また、「§4 前置詞」では空間感を強調するため、3次元空間を滑空する『Pilotwings』シリーズの曲で統一し、「§6 疑問と命令」では命令文を扱うので『ACE COMBAT』の曲を選ぶといった、ミクロな文脈も込めています。
これをGemini先生に見せたところ、「部分的にセットリスト製作のマインド(メタ作曲家としての視点)は既に身についている。ただし、これをそのままDJとしてリアルタイムで繋ぐのは、ジャンルもBPMもキーも滅茶苦茶なので技術的に至難の業だ」という評価を受けました。それはそう。
その後の議論をふまえて、自分はWord2Vec的に以下のように理解しました。
DJ = 動画のBGM - 主役としての動画 + 主役としてのダンス/ガンギマリパーティー
動画が主役ではなくなるため、「曲の再生時間がセクションの長さをカバーできるか」といった映像側の制約は消滅します。
一方で、クラブ音楽の生命線である「同じリズムがひたすら続く陶酔感」を維持することが求められるようになります。だから、音を絶対に止めてはならないし、BPMを合わせ、低音がぶつからないようにEQを操作して美しく繋ぐという新たな制約が生まれます。
そして、その制約の中で、「どのタイミングで、どうやって次の曲の美味しいところを混ぜ合わせるか」という繋ぎ方に自由――つまり、DJとしての創造性を発揮する余地――が生まれるということのようです。
触ってみた
ということで、大昔に買った東方アレンジCD(電子音楽はそんなに多くない…)や、最近好きなSynthwaveの曲をかき集めてRekordboxにぶち込み、USBケーブルとヘッドホンを持ち込んで何度か触ってみました。正直まだフレーズを破壊せずに曲を繋ぐことすらままならない状態ですが、上手く決まった時には気が狂うほど気持ち良いです。
ついでに、厳密には予約せずにこの機材に触ることは許されていないのですが、ルールをガン無視したことで、違法レイヴパーティー的な喜びも味わえたかもしれない。風元素の神様は称賛してくれるはず。
学び
これまで電子音楽について何も知らなかった。
何故これらの曲がひたすら4つ打ちをするのか、何故イントロとアウトロがやたら長いのか、何故同じジャンルの曲は一度聞いただけでは聴き分けがつかないくらいに似ているのか。正直退屈に思えていました。
しかし、DJ体験をして電子音楽的なパラダイムを理解したことで、ようやく全てが腑に落ちました。あれらはすべて、メタ作曲家ともいえるDJが、現場で他の曲とシームレスに混ぜ合わせるために最適化された建材であり、規格化されたパーツだったのです。
「使うための音楽」というコンテキストを知った瞬間、私の中で電子音楽の聴き方が根底から覆り、全く新たな地平が開けた感覚がありました。
個人的な気づき
そしてもう一つ、DJ機材に触れたことで、非常に個人的で、かつ深い心理的な気づきがありました。
「自分はこれまで、任意のツマミをいじることに対して、無意識の『恐れ』を抱いていたのではないか」という事実です。
思えば、自分用のオーディオインターフェースやスピーカーの音量ツマミですらも、私は基本的に一度設定したら触らないようにする傾向がありました。それが、DJ体験をした後だと、「何故自分はこれまで、このツマミを能動的に触ろうとしてこなかったのだろう?」と不思議に思うようになったのです。
記憶の糸を辿ってみて、思い当たりました。私の中にある「ツマミに対する恐怖刻印」は、おそらく小学生の頃、放送委員をやっていた時に獲得したものです。
放送室の機材には大量のツマミが並んでいましたが、それらに触れることは「放送事故を起こす絶対のタブー」とされていました。許されていたのは、入力チャンネルを変更するボタンの操作と、音量フェーダーを規定の(赤い丸シールが貼られた)位置まで上げることのみ。ツマミとは「平穏無事を維持するために、決して触れてはならないもの」だったのです。
私は数十年にわたって、「ツマミはいじってはいけないものだ」という呪いを引きずっていたのかもしれません。これが事実だとすれば、とんでもなく恐ろしいことであると同時に、ようやくその呪縛に気づき、自らの手で解呪できたということになります。
DJ体験やってよかった!
一部の情報は古くなっている可能性があります



