ノエルさんに怒られながら年末の大掃除をしていたところ、大量の同人CDを発掘した。5年から10年くらい前に購入したものだ。
データ自体はイベントごとにPCに取り込んであるはずだが、当時mp3で取り込んでしまっていたり、サボってメタデータを付け損ねていたり、iTunes->Google Music->Youtube Musicという保管場所の変遷の過程で妙なことになっていたりする。
そこで今こそ、可逆圧縮形式、完全なメタデータ付きで永久保存版のデータとしてリッピングすることにした。
ツール
Geminiさんにお伺いを立てたところ、「dBpoweramp CD Ripper」 を強く勧められた。
Sony Music Center for PC も候補として挙げられたが、ネット上でだいぶ評判が悪かったのでパス。
かつてはiTunesでGracenoteの恩恵に預かっていたが、今回は「二度とデータを失わない」ための最終アーカイブだ。FLAC形式での保存、そして複数のデータベースから情報を引けるPerfectMeta機能、何よりAccurateRip機能によってビット単位で正しく読めたかを照合できるという安心感が決め手となった。
作業
このツール選定は大正解だったと思う。有名どころのサークルのCDならば完全なメタデータ+アルバムカバーを引っ張ってきてくれる。
そうでなくとも、アルバムカバーをクリップボードから貼り付けられたり、トラックタイトルを一括でペーストできたりと、まさにこういう大量のCDのリッピング作業のために最適化されている感じがあった。

大部分が東方アレンジなので、数枚を除き全部、THB Wikiから情報を引っ張ってこれた。
1枚だけアルバムを出して消えたような、知っている人はほとんど居ないだろうサークルの作品ですら、しっかりアーカイブされているのには驚いた。インターネット上にこういうデータを残してくれるのは本当にありがたい…
作業フローとしてはこんな感じ。
- トレイからCDを取り出して格納する
- 次のCDをトレイに入れて読み込み開始
- Rip済みスタックにCDを置きつつ、段ボールから次のCDを1枚取り出して机に配置
- 読み込みが完了したCDがメタデータを引っ張ってこれてなければ、Geminiさんの整形済みデータをコピペ
- Ripping中に次のCDの情報をTHBWikiで検索し、ページ内の情報をGeminiさんに投げて整形してもらう
- Rippingが完了したら先頭に戻る
これを70回繰り返して、CDコレクションのアーカイブが完了。あとは自宅サーバーへ送って、Jellyfin上でよしなにやったら、美しいデジタルアーカイブが完成した。

CDの中には、何度か拭いたり吹いたりしないと正常に読み込めないものが5枚くらいあった。幸い、今回は完全に読み取り不能なCDは発生しなかった。CDの寿命は30年らしいので、15年前に製造されたCDをアーカイブするのにはかなりギリギリのタイミングだったのかもしれない。
ロストメディアを救出せよ
リッピングを進める中で、とっくに活動終了しているので再販は望めないしインターネットにも存在しないアルバムや、THB Wikiにすら載っていない、検索しても全く情報が出てこないサークルのアルバムも現れた。
誰かの目に触れることなく、場合によってはデジタル上の指紋すら持たないロストメディア予備軍達。
それらを一つ一つ、ブックレットから曲名を書き起こし、FLACデータとして封じ込める。失われゆく文化遺産を保護するフィールドワークのような、奇妙な使命感を帯びていた。
全ての作業が完了したのは、開始から7時間が経過し、午前3時半を回った頃だった。静まり返った部屋で、完成したばかりのJellyfinライブラリを眺めながら、ハイボールのグラスを傾ける。
記念すべき「シャッフル再生」の一発目にスピーカーから流れてきたのは、あの聴き慣れたイントロだった。

東方Projectにおける音楽方面の二次創作の歴史そのものとも言えるこの曲が、71枚659曲の中から選ばれた。流石に運命的なものを感じざるを得ない。
この善行に対してファンファーレを鳴らしてくれたかのような、あまりにも劇的なフィナーレだった。