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映画「国宝」は確かにすごい邦画だった

なんだか話題になっていると聞き、映画「国宝」を観てきました。本当に、

  • 「国宝」というタイトル
  • なんだか売れているらしい
  • 「宝島」と絶対に間違えてはいけない

くらいしか知らない、ストーリーに関する一切の事前知識が無い状態で観ることができました。

その感想です。

ネタバレは回避してあります。

すごかった#

スタッフロールが流れ出した時、最初の感情は「この映画はどういう気持ちになれば良いんだ?」という困惑だった。

面白かった!というのは違うし、感動というのも違う気がする。大きなカタルシスがあったわけでもない。何か深遠なメッセージが込められているというわけでも(たぶん)ない。

一方で、つまらなかったわけでもない。3時間というとんでもない長丁場であるにも関わらず、退屈は全くしなかった。ただ、一人の男の生き様に圧倒されたという感じだった。

一つ前の席にはカップルが座っていたが、彼らはこの後どういう意見交換をするのか心配になった。

英雄の旅 ではない#

英雄の旅のフレームワークを使って解釈しようと努めて鑑賞していたものの、上手く行かなかった。何度も観てストーリーを完全に把握できたとしても、上手く英雄の旅に落とし込むことはできないと思う。日常の世界と非日常の世界にあたるものが思いつかないし、持ち帰った「恵み」もわからない。

それゆえ、ハリウッド的な面白さは無かったということになるのだろう。が、それでも引き込まれてしまった。

明らかに純粋な邦画の血を引いているにも関わらず、ハリウッドに慣れた現代の人をちゃんと惹きつけている、というのはすごいことだと思う。

では何が面白いのか?#

その要因が何なのかは正直よくわからない。が、一つ言えるのは展開の速さかもしれない。

邦画と言えば、コピペになっている「暗い食卓でボソボソ家族会議」的な、話が何も進まないし、映像的にも全く面白くないシーンが悪名高い。が、「国宝」においてそのようなシーンはほぼ無かった。

歌舞伎を演じている間は映像的にすごく面白いし、それ以外のシーンではちゃんと話が進んでいく。これが一番、「邦画なのにすげー」と思ったポイントかもしれない。

また、役者の演技も説得力のあるものだった。主人公たちの芸に対する執念、狂気とも言えるほどの渇望には、目を離せなくなる引力があった。また、少なくとも少年時代とその後では異なる役者を使っているはずだが、ちゃんと同一人物だと感じられる子役をどうやって見つけてきたのだろうと思った。

まとめ#

この映画は、面白いかつまらないか、感動したかしなかったか、という二元論で語るべき作品ではないのかも。ただひたすらに、芸の道に人生を捧げた男の凄まじい生き様を3時間にわたって浴びせられ、その熱量に圧倒される。これは娯楽というより「体験」でした。

もっと歌舞伎についての事前知識を入れればより一層深く理解できたのかもしれませんが、別に知らなくても大丈夫だし、変な事前知識を持たないほうが楽しめる作品だと思います。

映画館で観るべきです。

封面
示例歌曲
示例艺术家
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