『風の谷のナウシカ』を考察する上質冷奴を漁っていたら、「裏返し構造」の概念に出会った。
アニメ版『風の谷のナウシカ』に見られる裏返し構造の生成 ―原作漫画版との対比から―
面白かったのでとりあえずのメモ。
裏返し構造
裏返し構造とは、ざっくり言うと、物語において前半で提示された複数のテーマが、後半で逆順に解決されていくこと。
広げた風呂敷を逆順に畳んでいく、というとイメージが湧きやすいかもしれない。
これは元々ルーマニアのフォークロリストであるミハイ・ポップが、ルーマニアの昔話「兵士としての少女」の構造から発見したものらしい。 本来は原著「Metode noi in cercetarea structurii basmelor」にあたるべきなのだが、見つけられなかった(見つけたとしても解読できなかっただろう)。
アイヌ口承テキストに見られる裏返し構造 ―異郷訪問譚によらない事例―によれば、裏返し構造は以下の 2 つの特徴を持つ構造である。
- A:物語の「前半」部分に配置された要素に対して、物語の「後半」に相当する要素が、「前半」の「否定」・「対立」もしくは「対照」としての関連性を持って出現する。
- B:物語の「後半」に配置された要素は、「前半」の対応する要素の配列順序とは逆の順番で出現する。
例: けものフレンズ
例えばけものフレンズをこの構造で分析するとこんな感じになるだろう。
- (1 話)かばんは目的なくさばんなちほーを彷徨う。
- (1 話)かばんは自分が何の動物か知らない。
- (1 話)かばんはセルリアンと戦うが、犠牲者アードウルフを救えない。
- (2 話)かばんはジャパリバスを得る。
- (11 話)かばんはジャパリバスを失う。
- (11 話)かばんはセルリアンと戦い、犠牲者サーバルを救う。
- (1 話)かばんはセルリアンと戦うが、犠牲者アードウルフを救えない。
- (12 話)かばんは自分がヒトであると宣言する。
- (1 話)かばんは自分が何の動物か知らない。
- (12 話)かばんは目的を持ってジャパリパークを旅する。
物語の序盤で発生したイベントが、終盤で逆順に対照的なイベントによって回収されていることがわかると思う。
例: Ace Combat 04 のサウンドトラックにおけるライトモチーフ使用
実は「裏返し構造」を知る前から、同じような構造をゲーム『Ace Combat 04 Shattered Skies』 のサウンドトラックに見出していた。 なので、この構造にちゃんと名前があると知って超驚いた。
- (Tr.1 Shattered Skies)オープニング
- (Tr.2 ISAF)メビウス 1 の登場
- (Tr.4 Operation)劣勢時ブリーフィング
- (Tr. 18 Stonehenge’s Attack)ストーンヘンジからの攻撃
- (Tr. 23 Stonehenge)ストーンヘンジへの攻撃
- (Tr. 25 Second Strike)優勢時ブリーフィング
- (Tr.4 Operation)劣勢時ブリーフィング
- (Tr. 38 Heaven’s Gate)メビウス 1 の最後の一撃
- (Tr.2 ISAF)メビウス 1 の登場
- (Tr.40 Blue Skies)エンディング